独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
(夕飯どうしようかな)

仲良く二人で食べる雰囲気ではないかもしれないけれど、何もしないのは気が引けた。

結局家にある材料で簡単なものをつくることにした。

現場作業で汗ばんだ体をシャワーでスッキリ洗い流してから、キッチンにこもる。

メニューは生ハムとアスパラのクリームスパゲティと、グリーンサラダ。

ソースが出来上がり、あとはパスタを茹でるだけとなった頃に晴臣が帰宅した。

「食事の用意をしてくれてたんだな。ありがとう……」

晴臣がキッチンにいる瑠衣を見て目を細める。

「うん、お腹空いてるでしょ?」

「ああ。そうだこれ、食後に食べようと思って買って来た」

晴臣の手にしている紙袋には見覚えがあった。以前瑠衣が気に入ったチーズケーキの店のものだ。

「ありがとう。コーヒーと一緒に頂こうね」

彼から受け取ったとき、思わず口元が綻んだ。

「瑠衣、どうかした?」

「ううん、何でもない。晴臣さんシャワー浴びるでしょ? 時間見て麺茹でておくから」

「ああ、分かった」


さっき顔が緩んでしまったのは、晴臣も瑠衣と同じようなことを考えていたのだと思ったからだ。

(深刻な話になるかもしれないけど、相手を気遣っている。心のどこかで仲直りすると信じてるんだ)

だから瑠衣は食事の用意をして、晴臣はデザートを買った。

お互いの本音を晒したら傷つくことがあるかもしれないけれど、それでも彼と離れたくない。晴臣もそう思ってくれんじゃないか、そんな気がした。
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