愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)

 シャーリィの言葉に早合点(はやがてん)したレグルスは、うっかり口を(すべ)らせた。シャーリィの瞳が大きく見開かれる。

「え……?私とお兄様が……本当は兄妹じゃない?」

 シャーリィの呆然とした(つぶや)きに、レグルスは己の失言を(さと)り、絶望の表情で頭を(かか)える。
「ああぁ……どうしよう。ウィレスに殺される……」

「どういうことなのですか!? 私とお兄様が、兄妹じゃないって。レグルス様はご存知なのでしょう!? 」
 シャーリィは『言うまでは離さない』という表情で、レグルスの襟首(えりくび)(つか)みかかる。

 レグルスは、しばらく青ざめた顔で(うめ)いていたが、やがて覚悟を決めたように表情を改めた。

「……それを話せば、君は知りたくなかった真実を知ることになる。家族に対する目も変わるだろうし、自分の立場や存在意義に、疑問を抱くことにもなるだろう。それでも、聞きたいかい?」

 その、あまりに真剣な眼差(まなざ)しに、シャーリィは躊躇(ちゅうちょ)した。
 
 ふいに、それを聞くのが恐くなる。だが、脳裏(のうり)に浮かんだ兄の顔が、シャーリィに決断させた。

 知りたい。もし、自分達が兄妹でないのなら――胸を(さいな)むこの許されざる想いを、認めても良いと言うのなら。

「教えて下さい。たとえどんな真実でも、私は知りたいです」
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