愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)
「嘘よ!あのお母様が、そんな大それたことをなさるはずがないわ!」
シャーリィの叫びに、レグルスはリュートを弾く手を止めた。
「聡明な方だからこそ、この国の行く末が案じられたのではないのかな。それに子を想う母心が目を曇らせたということだって考えられる。国民の期待を裏切り、王女ではなく王子として生まれてきた少年に、内乱の火種となるべく生まれてきた娘。どちらも幸福な人生を歩めるとは、とても思えないからね」
「嘘よ!お母様は、私のことを可愛がって下さっているわ。実の子じゃないなんて、そんなこと、あるはずがない!」
どうにかして否定したくて、シャーリィは髪を振り乱し、首を振る。そんなシャーリィに、レグルスは静かに告げた。
「王妃の姉妹と結ばれた、元シュベルターの御曹司の顔を見たことがあるかい?君と同じ、光の加減で碧にも翠にも見える不思議な色の目をしているんだよ」
「……嘘よ。私が、お父様とお母様の本当の子じゃないなんて。王女じゃないなんて。それじゃ私、どうして光の宝玉姫なんてしているの……?」
泣きそうな声でシャーリィは問う。レグルスはそれには答えず、ただシャーリィの頭を宥めるように優しく叩いた。