「キャロライン=ギセイシャー侯爵令嬢! 貴様のような性悪女への愛など生まれようがない! 私はこの場をもって、愛の女神であるナイトリー神に誓う! 貴様との婚約を破棄して、このアリエナーシュ=アバズレー男爵令嬢との真実の愛を貫く!」

 おーおー、本当にやってくれましたわね。
 この場がどこだか分かっているのかしら。

 貴族学園の卒業パーティー会場ですわよ?

「ナシー様ぁ、素敵ぃ!」
「そうだろう、アリー! もう少しだけ我慢しておくれ、諸悪の根源を倒してくるから」

 倒すってなんですの、もはや勇者にジョブチェンジしていますの?

 私は大きくため息をついた後、ナイトリー王国必殺のカーテシー(ただの挨拶)をお見舞いして、皆の注目を集めます。

「第三王子殿下のお言葉、しかと拝聴いたしました」
「そ、そうか! ではお前は国外追放だ! 出て行け!」
「それはまあいいのですが、婚約破棄を承ることは不可能です」
「な、何ッ!?」

 私が婚約破棄を否定するとは思わなかったのだろう。
 驚いた顔をしたナサケナシー第三王子殿下は、直ぐに頬を緩めてこれ以上ないほどのニヤついた顔をし始めた。

「なんだぁ? キャリー貴様、私に惚れているのか! いいだろう、第二夫人ぐらいなら……」
「ナシー様ぁ、何を言い出しますのぉ!?」
「いいかい、アリエナーシュ。キャロラインの家は侯爵家だ。あれに働かせておけば、私達は真実の愛を育むことに専念できるだろう?」
「ナシー様ぁ、天才ですわぁ!!」

 全部聞こえてますけどー!?

 いやもうね、周りの学生達もドン引きですわ。
 早く保護者の皆様もやってこないかしら。
 というか、国王陛下、はよはよ!
 教師の皆さんじゃ、この地位だけは高いバカ王子を止められないみたいなのよ!

「あ、一つ言っておきますけど、私は殿下に惚れていませんよ」
「素直じゃないな。こうして婚約破棄を宣言されて、私と離れることに耐えられないとようやく気がつい……」
「私と殿下はそもそも、婚約していませんからね」

 時が止まったかのように固まる第三王子とアバズーレ男爵令嬢に、私は続ける。

「私もギセイシャー侯爵家も、第三王子殿下との婚約をはっきりと断っています」
「はぁ!? 何を言う、父上も母上も……」
「侯爵家からの断りの手紙は毎月送っていますが、毎月無かったことにして燃やしているのは王家の方です。郵送省の内容証明もあるので間違いありません」
「王子妃教育だって受けているだろう!」
「王子殿下の婚約者候補は数名いて、全員受けさせられています。受講しないと、貴族学院を除籍にすると全員脅されているからです」
「はっ!?」
「王子妃教育を受けるくらいですから、私達候補の令嬢達はそれなりの家の者ばかりです。各家ともに、王家のやり口に不満爆発寸前ですのよ」

 目を白黒させるナサケナシー第三王子殿下とアバズレー男爵令嬢に、私は失笑します。

 暗に、婚約者候補全員がナサケナシー第三王子との結婚を嫌がっていること、伝わったかしら。ふふっ。

 そんなこんなしているうちに、ようやく保護者勢が会場に到着しました。

 ナサケナシー第三王子のヤらかしを聞いた国王陛下は、怒髪天だったようです。

 第三王子とアバズレー男爵令嬢は、国王陛下の護衛で来ていた近衛兵に会場から引き摺り出されて、その日は会場に戻ってきませんでした。

 国王陛下は、お可哀想に真っ青な顔をしながら卒業者に向けて演説をしていました。

 まあ、第二王妃選びに失敗した結果なので、自業自得ですわね。