交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました
夢を叶えて


十カ月後の五月中旬、茉莉花はパリのシャルルドゴール空港から北へ二十キロほどいった場所にある『シャンティイ城』にいた。

小春空が広がるなか白馬が引く真っ白な馬車に乗り、隣には王子様かと見まがうほど美麗な吉鷹がいる。

いつか結婚式を挙げるなら、フランスの古城で。
そんな夢を抱いていた茉莉花だったが、ハワイで身代わりの花嫁を務めてそのまま結婚となったため諦めていた。

その夢を実現してくれたのは、ほかでもなく愛すべき夫、吉鷹である。

お互いの両親とふたりの間に生まれた子どもが参列するだけのささやかな挙式だが、なににも代えがたい瞬間を迎えた。

三十二万坪の庭園を有するシャンティイ城は映画の舞台となったことでも有名で、格式高い国宝級のお城だ。イングリッシュガーデンには愛の島と金星の神殿を有し、そこでの挙式はため息が出るほどロマンティックだった。

茉莉花のためだけに作られたウエディングドレスは、レースがふんだんにあしらわれたAライン。誰かの身代わりではなく茉莉花のために神父が神の祝福を祈り、茉莉花だけが吉鷹の愛を受け取る。

そんな夢のような時間を過ごし、広大な庭園をふたりきりで馬車で移動する。

悠生(ゆうせい)と名づけられたふたりの息子は今、紫や和美に代わる代わる抱っこされ、茉莉花たちが馬車で移動するのを遠くから見て興奮気味だ。手を振る茉莉花に、ふたりの両親が大きく振り返した。
< 283 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop