イーチェンと身体を合わせてから、一月も経った。幸い今日は誰も訪問に来る予定もなく、とりたてて用事もない。

 このままイーチェンに抱かれ続ければ、いつかは子どもを授かるだろう。ルゥルゥは、もう女官に戻ることはできないと、ようやく決断することができた。

辞職することを、鳳凰宮の女官長に直接伝えたいと思ったルゥルゥは、シーハンにかけあった。同僚として一緒に働いて来た女官にも、できれば一言だけでもお礼を伝えたい。

「シーハン、一日、いえ、半日だけでも女官の姿に戻って皆に挨拶がしたいわ」
「それは……、お控えください、といっても行ってしまいますわね」
「えぇ、えぇ、わかってくれて、ありがとう」

 僅かな時間だけと約束したルゥルゥは、久しぶりに女官の姿になる。この姿で、何度もイーチェンに茶を淹れたことを思い出す。女官と主人、という関係であったが、とても心地よい空気を共有していた。

 時折、イーチェンが閨の中で「ルゥルゥ」と名を呼ぶことがある。その度にルゥルゥのこころがキュッと締め付けられた。けして、自分とわかって抱いているのではないのに、愛されていると錯覚してしまう。

 ルゥルゥの中で、イーチェンの存在が大きくなっていた。子どもの頃の、イーチェンではない。今、ルゥルゥが求めるのは大人の姿の、獣人王のイーチェンだ。

 ——彼を、愛している。