後宮の生活にも慣れて来た頃、勉強の途中でルゥルゥは以前から気にかけていたことをシーハンに聞いた。

「あの、これまで後宮に上がった妃の方々は、どうして……、もう誰もいないの?」
「……」

 シーハンはぐっと口を結んだ。言いにくそうにしている姿を見て、ルゥルゥは語尾を強めて命じた。

「シーハン、教えて」
「はい、私が申し上げるのも恐れ多いことですが、陛下はこれまで後宮に上がられた方々と同衾されることなく、解放なされました」
「陛下が? どうして?」
「……今は、申し上げることができません。陛下の謁見が終えられた後でしたら、お伝えしましょう」
「私が陛下に会った後、なの?」
「はい、まずは一度、陛下にお目見えしませんことには」

 シーハンは、もう話せないと口を閉じた。ルゥルゥもこれ以上聞くのは気が引けたため、会話を止めて手元の本を開く。後宮のしきたりの書いてある本は厚くて、季節ごとに細かく分けられている。はぁ、とルゥルゥは何度目かのため息をついた。





「兎貴人様、今夜は陛下がお下りになられますので、ご用意を」
「えっ、今日なの?」
「はい、夕方になると連絡がまいりました」

 朝起きて、盆に入った冷たい水で顔を洗い終えたルゥルゥのところに、シーハンは息を切らしてやって来た。後宮に来てから一月も経ってようやく、獣人王に会える。