ルゥルゥは目を細めて九歳になったイーチェンをみた。背丈はまだルゥルゥより低いが、剣の稽古を始めて以来、どんどん強くなっていく。ちょっと生意気なところも可愛いが、それを言うと拗ねてしまう。

 もう子守りなどいらない年齢となったが、ルゥルゥがいないとイーチェンの機嫌が悪くなる。そのため、屋敷の召使いとして勤め続けていた。

 不思議なことに、年を取っているはずが容姿は変わらない。過去の時間の中にいても、自分の体は時間が過ぎることがない。どこまでも異質な者であることを、思わずにはいられなかった。

 結婚を勧める者も、また誘う者もいたが、ルゥルゥは断ることしかできなかった。過去の時間で自分が生き続けていく確信がなかった。

 そしてそれは、現実のものとなっていた。時折、ルゥルゥは自分の手や足先が薄くなるのを見てしまう。ちょうど、自分の誕生する日の六カ月ほど前になる。

 きっと、今、自分はワン家の母の胎の中にいるのだろう。そのうち、ルゥルゥの誕生日が来たら、この身体は過去から消滅してしまう。自然とそう思えるようになっていた。

 ここにいられるのも、あと残り半年となったところで、イーチェンに見合い話が持ち上がる。

「イーチェン様がお見合いされるのですか?」
「そうなんだよ、まだ十歳にもならないのにねぇ」
「お相手は、決まっているのですか?」