――っ、ここは?

 がばり、と飛び起きたルゥルゥは部屋の中を見渡した。家具も調度品も見慣れたものばかりだから、ここは琉璃宮で与えられた自分の部屋だ。額に汗が一筋流れる。どういうことだろう、あれは夢だったのか。

 それでも手には生々しい感触が残っている。九年という長い期間を、夢の中で過ごしたとも思いにくい。さらに、ルゥルゥの着ているものは召使の着る平服だった。

「やっぱり、過去の世界で私は生きていたのね」

この手で黒狼のイーチェンを抱っこして、食べさせてあげて、一緒に遊んだりもした。長い期間を過ごしていたのに、この部屋は何も変わりがなく、時が流れていないようだ。

 消えた時間に戻ったのだろうか。そうとしか考えられない状況に、ルゥルゥは何が現実なのかわからなくなってしまう。

それでも、イーチェンを愛しいと思う気持ちは強く残っていた。人化できず、甘えることを知らなかった黒狼。少年になった彼に降りかかった不幸、母を失った痛み。

――会いたい、会って彼を抱きしめて、孤独を癒したい。

身体の奥底から湧きあがる欲求に、身体が小刻みに震えてしまう。ルゥルゥは自分の腕をまわして、ギュッと抱きしめた。

「イーチェン様、会いたい」

 渇望する思いはまるで底のない沼のようだ。彼の傍に行き、——彼を愛したい。