私は、森川優里 三十八歳、城之内建設に勤務している。
この日、社内は大変な騒ぎになっていた。
新社長が就任するとの事だったのである。
その人物は城之内陸 三十歳、城之内建設の御曹司である。
そして私の元彼、そう、私は二年前に陸と付き合っていた。
父親の仕事は継ぎたくないと別の会社に就職していた。
城之内建設社内で、私達は出会った。
「すみません、社長室は何処ですか」
そう言って私に声をかけて来たのが陸だった。
それから二年間交際を続けて来た。
私の中ではこのまま交際が続いて行くと結婚かなと勝手に思いを巡らせていた。
ところが陸は突然、私に向かって信じられない言葉を投げつけた。
「優里、俺と別れてくれ」
「えっ、今なんて言ったの?」
私は突然の彼の言葉に困惑して、聞き直した。
私の聞き間違いかもしれないから……
「俺と別れてくれ」
やっぱり聞き間違いではなかった。