クールな御曹司の溺愛ペット【続編完結しました】
ペットになりたい
高田さんが見繕ってくれたアンクル丈パンツにカットソー。
上下スウェットからずいぶんと見違えるようになった私。
これなら一成さんの横に並んでも見劣りしな……いや、元が違うのでやっぱりちょっと遠慮してしまうかも。
だけど一成さんは「千咲は何を着ても似合う」と甘い言葉を放ったので、その不意打ちに言葉を失った。

そんなこと言われて、お世辞だとしても、嬉しくないわけがない。
勝手ににやけてしまう頬をごまかしながら、京都の街を一成さんの横に並んで歩いた。

もうすっかり辺りは薄暗くなってきている。

「日帰りの予定だったが、泊まりでいいか?」

「泊り、ですか?」

ドキンと心臓が変な音を立てた。
一成さんとお泊り。
お泊り……!

考えただけでドキドキと鼓動が速くなってしまう。
別に何かがあるわけではないのに、何かを期待してしまう私もいて。
そんなことを考えてしまうなんて、私ったらなんて不埒なのだろう。

「東京行きの新幹線は二十一時半が最終だからな。これから夕食をとって京都駅まで戻ることを思うとあまり時間がない。だったら泊まって明日ゆっくり観光してから帰る方が有意義だろう?」

「いいんですか、そんなことして」

「別に泊まることに対して出張費清算をするわけじゃないから問題ない。心配しなくとも大丈夫だ」

心配はそういうことだけではないのだけど。
返答に困っていると、「無理強いはしないが」と窺うように見つめられる。

無理とかそんなんじゃなくて、一成さんと少しでも長く一緒にいたい。
お泊りなんて夢のようじゃないか。
緊張とか遠慮とか、そんなことを気にしてチャンスを棒に振ってしまっては後悔するに違いない。

「じゃああの、親に電話します。実家暮らしなので」

「そうか」

私は一成さんにくるりと背を向けて母に電話をかける。
特別厳しい家ではないけれど、泊まりとなれば何かしら文句は言われるだろうと予想された。
もう二十歳を超えているのに、何かと過干渉なのだ。
お姉ちゃんが結婚して出ていった今、その矛先は私だけに向いている。
< 95 / 163 >

この作品をシェア

pagetop