あれから日常生活が特になにか変わったというわけではないのに、プライベートも仕事も色づいて見えた。

そんなある日の夕方。

「うん、おいしい」

鍋の中の煮物の味見をして、火を止めた。

甘味、塩味、うま味、コク、どれを取っても完璧だ。もちろん自分比である。あとはグリルで野菜と魚を焼くだけだ。

晩ごはんの準備が整い、隆成さんが仕事から帰ってくるのを待っていると、光一さんから電話がかかってきた。

たしか光一さんと話すのは、エリザさんが病院にやって来た日以来だ。そのときに『なにかあればいつでも電話してね』と言ってもらったけれど、私からはかかけていなかった。

『千里ちゃん、こんばんは。今大丈夫?』

通話ボタンをタップすると、いつも通りの穏やかな声がした。

「はい。リビングでのんびりしていたところです。光一さんは?」

『俺は診療所から島内の自宅に帰っているところだよ。千里ちゃんと隆成はどうしてるのかなって、ふと思ってね』

光一さんは私たちを気にかけてくれていたようだ。