保健室登校
プロローグ
保健室は、いつも洗濯用洗剤の香りがしている。

教室と違ってこの場所は静かで、普段は気づかなかった音やにおいを感じる。

空気清浄機が動く音、先生が淹れてくれた紅茶の香り、グラウンドの笑い声……。

保健室のスペースの一角で、私は教科書を広げた。

白い衝立(ついたて)と、養護教諭の立花(たちばな)先生が私のことを守ってくれている。

中学校の卒業式まで、残り一ヶ月。



私はもう、教室に行くことはないんだろう。


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