卒業式後の教室では、涙声の生徒が色々な話をしていた。
みな、お祝いの花を胸につけて、どこか誇らしげだが切なそうにもしている。

「今日で中学校卒業だなんて、嬉しいような寂しいような不思議な感じがするね」

話しかけてくれた隣の席の佐藤さんに、私は頷く。

「うん、なんだかすっごく早かった。保健室にいるときは時間が長く感じていたのに」

「もっと早く、星野さんとちゃんと話してればよかった。こんな日にあれなんだけど……本当にごめんね」

「もうそれは何回も聞いたよ。気にしてないから、大丈夫だよ」

教室に戻ってから少しずつクラスメイトとも打ち解けてきて、特に佐藤さんとは友達といえる関係になれたと思う。彼女のおかげで、教室に戻ってからの不安もずいぶんと減った。

出口さんや浜田さんは相変わらずだったけど、寄り添ってくれる人がいるだけでもこんなにも気持ちが変わるなんて、自分でも驚いた。

それに、なにより私を支えてくれたのは……。

スクールバッグに付けている、慎介くんの名札を撫でる。

彼がいなかったら、私はきっとまだあの頃のままで、暗い気持ちで卒業していた。
そして、それをずっと引きずっていたかもしれない。
彼には感謝してもしきれない。なにより、私は――

「星野さん、例の彼とはどうするの?」

「へ!? どうするもなにも……その……」

「彼、どう考えても星野さんのこと好きだと思うよ。今日でお別れになるんだからちゃんと気持ち伝えたほうがいいよ!」

佐藤さんは心配するような表情をしていた。

「う、うん。でも慎介くんみたいなイケメンが私なんかに……」

「五十嵐くん、どんな女の子が話しかけても無表情らしいよ。だから、星野さんの前で笑顔になってたのを驚いた人も多いって」

「そうなんだ……」

そのとき、教室に担任の先生が入ってきた。
教室はいっせいに静まり返る。

先生は教室を見渡して、私を見て頷いた。
そして、アユちゃんの方も見る。

「今日のこの日を、みんなで迎えられたことが本当に嬉しいです」

先生の頬を涙が伝っていた。

卒業するときに心残りなんて、ないほうがいい。

私も、アユちゃんも、クラスメイトも、先生も。

私は今日、慎介くんに伝えなきゃいけないことがあるはずだ。