緋沙子はサロンを出て家路についた。体力は使わないが一日中、占いをしていると精神力と頭を使う。少し休んで夕飯の支度にとりかかった。

 七時過ぎに夫の弘明が帰宅した。弘明は鞄を投げるようにおいて食卓に着いた。

「あー疲れた。やっと明日休みかー」
「お疲れ様。ビール冷えてるわよ?飲む?」
「風呂入ってからにするかな」

 いつものように食事を終えて風呂に入り二人で少しテレビを観た。

緋沙子は先にベッドに入り、弘明は少しパソコンをいじってからベッドにやってくる。
「今日はどうだった?」
「五人占ったから疲れちゃった」
「そっか。じゃよすかな」
「弘明が疲れてるんじゃないの?」
「でもまあ明日ゆっくりできるしさ」

 緋沙子のパジャマの中に手を入れて弘明は身体を弄った。
 されるがまま、愛撫に応じながら緋沙子は、ふっと今日会った奥田の深い色をした目を思い出してしまった。
夫の愛撫に集中しようと頭を振って奥田のことを意識から消そうとした。
しばらくすると弘明は慣れた手つきで緋沙子の身体を開き自分を重ねる。

抱かれ慣れた身体と心地よい刺激に、いつの間にか緋沙子は喘ぎながら今日一日の出来事を過去へと追いやっていた。


 智樹が寝室で今日借りた本を読んでいると機嫌よく由香里がベッドに入ってきた。

「今日のサロンよかった。さっき小春もママの手がすごく綺麗ってほめてくれてね。久しぶりにリラックスできたかな」
「またいけば良いよ」
「智樹もやってもらえばいいのに。」
「俺はどっちかっていうと温泉とかのがいいかな」
「そういえば占いはどうだった?」
「今年はいい年だってさ」
「それだけ?」
「占ってもらうこともないから、なんか占い師さんに悪かったかもね。ああ。でもなんかよく当たってる気がするなあ」
「今度は私も占いしてもらおーっと」
「じゃ、せっかくだし綺麗になった由香里の身体でも拝見しようかな」
「ふふ」

 由香里はパジャマを脱いで智樹の隣に横たわった。
「いい香りがするね」

 丸い桃色の頬を撫でながら薔薇のような香りを嗅いだ。
そして、ふと水仙の香りを思い出した。(ああ。あの占い師は水仙の香りがしたな)
記憶に忍び込む水仙の香りと白い手首の赤いベルトの跡、そしてなんとなく懐かしい気がする緋沙子の大きくて黒い、しかし澄んだ目が智樹をいつもより刺激的にさせる。

智樹の身体の下で控えめに喘いでいる由香里を見てハッとし今の行為に集中した。