総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
「私、朝ごはん作るからお母さんは寝てて」
私の言葉にお母さんは「ごめんねぇ」と申し訳無さそうな顔をしながら、大人しくしょんぼりと肩を下げながら戻っていった。
***
私は今年、高校一年生になる。
季節はいつの間にか、冬から春へと移り変わっていた。
裕翔さんとは、あの冬の日以来まだ一度も会っていなかった。
私がこれから三年間通う高校は条聖学院高校という世間ではいわゆる“お嬢様”高校だ。お嬢様高校と入っても、条聖学院は共学だから、もちろん金持ちの男の子や御曹司なども通っている。
私はこう見えても、世界的に有名な結城グループの令嬢である。
裕翔さんは私のお家を見た時、さほど驚いていなかったけれど、普通は凄く驚いてしまうと思う。
でも、それもそのはず。裕翔さんのお家はまさに豪邸だったのだから。
日本庭園が広がる大きな庭に、お城のように大きい平屋建築の家が私のお家だ。
本当は今日も車で行く予定だったけど、自分の足で歩いて行きたいという我儘を言った私に、側近である一条は渋々了承してくれた。
でも、一条からも1つだけ条件があった。それは、目立たないように私の跡を追わせてほしいということだった。
だからさっきからつけてくるような足音がするのは、一条の足音だと思う。
でも、その足音はどんどん私に近づいてきているみたい。私は急に怖くなって、歩く速度を速める。
トコトコトコトコ……。
やだ、ヤダ……、一条助けて…。