総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
「あ、えっと、……誰、ですか?」
私の言葉に、心底驚いたような顔をしたその女の子。
「え、嘘……。桜十葉、私だよ?ねぇ、明梨だよ!もしかして、覚えてないの……っ?」
その子は突然驚いたと思ったら、今度はすごく悲しそうな表情をしていた。でも、何でだろう。その子のことを見ていると、すごく胸がギュッとなる。
「えと、はい。……ごめんなさい。覚えてないみたいです」
本当のことを、伝えた。でもさっきから、胸がざわつくのは何でだろう。
申し訳なくなりながらそう告げると、明梨ちゃんという女の子は傷付いた顔をして苦しそうに口元を歪めた。
「私たち、親友だったのに、……」
「しん、ゆう?えと、どこかで会ったことありましたか?」
私の隣でずっと会話を聞いていた真陽くんが何かを察したのか、私の手を掴んで、自分の方へ引き寄せた。
「もう行こう。おとちゃんのこと、迎えに来てくれてる人がいるんでしょ?」
「え、…?う、うん…でも、」
あの子は、私の親友だと言っていた。でも私は、その子のことを何も知らないし何1つ覚えていない。
その場で呆然と立ち尽くすその子のことを不思議に思って歩きながら何度も振り返った。
すると突然、どんっ!と誰かとぶつかってしまう。
「ふぐっ!あ、あの、ごめんなさい……っ!」