その後、また裕翔さんに存分に甘やかしてもらって私を家まで送っていくという裕翔さんと大豪邸をあとにした。
「甘えたくなったらいつでもきていーからね」
裕翔さんの手が私の手を甘く包み込む。私の小さな手は、裕翔さんの大きな手に包まれて温かくなった。
「ところで、……裕翔さんって何歳くらいなんですか?」
「あ、それ聞いちゃう?」
「あ、聞いたらまずかったですか?ご、ごめ……っ」
「22歳のふつーの大学生だよ」
"ふつー"という言葉に引っかかったがとりあえず聞いても良かったということに安心した。
22歳、…かぁ。私とは6歳も大人なんだなぁ。
「桜十葉は?高校生でしょ」
私の着ていた制服でそう分かったのか裕翔さんはいたずらっ子のような顔を向けてきた。
「大人のおにーさんは好きですか?桜十葉ちゃん」
ほら、まただよ。裕翔さんは私の心臓にとっても悪い人。突然びっくりするようなことを言うんだから。
「し、知りませんっ!」
「あ、桜十葉ちゃん照れてるの〜?可愛いね」
「むっ………」
思わず眉をしかめる。
「怒った顔も可愛い。桜十葉ちゃんは何やっても可愛いから無駄だよ」
そ、そんなことないんだから!!
私の顔はおそらく真っ赤っか。裕翔さんって誰にでもこういうことするのかな?
他の女の人に優しくする裕翔さんを思い浮かべると、なんだか分からないけど心臓がキュッと痛くなった。
「裕翔さんは、……誰にでもこういうことするんですか?」
「しないよ。俺のお姫様は桜十葉だけだよ」
さっきまで私をからかうように、ちゃん付けで呼んできた裕翔さんは、急に真剣な顔をしてそう言った。
そして、優しく頭を撫でられる。その動作一つひとつがかっこよくて胸のドキドキが加速する。
私の家はもうすぐそこだった。家族に裕翔さんといる所を見られたくなくて、わたしは早めに切り出した。
「あ、あの……もう大丈夫です。送ってくれてありがとうございました」