Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
 周囲からは露骨に疎まれ、これ以上出しゃばるなという空気が、伝わってくるようだった。

「戦況を聞いてはいないが、大体、想像は付くな」

 ネモの言葉に私も頷く。
 数日、大勢の兵士達が出陣しては、夜更けが近づくと砦まで退却してくる。
 日に日に負傷兵は増え、兵士達の顔色も暗い。
 その様子は、相手を追い詰めているというようには、とても見えなかった。
 その時、足音が聞こえ、廊下の向こうから、1人の兵士が私達に駆け寄ってくるのが見えた。

「何の用だ?」

 ネモが応対する。

「はっ。次の作戦会議に、お2人にも出席をお願いしたいと、大隊長からの要請です」

 私達は顔を見合わせる。
 戦況の僅かな情報すら伝え渋っていた彼らが、今更、私達に何の用なのだろう?
 ここで考えていても仕方ないことではあった。
 私達は、頷きあってから、

「わかった、行こう。案内してくれ」

 兵士の後ろを付いて、作戦会議室へと向かった。



「おおっ、来てくれたか!」

 ドアを開けると、数人の小隊長達が、テーブルを囲んで、向かい合っていた。
 歓迎するように声を上げたのは、魔の谷で、私達と共に戦った、あの時の部隊長だった。
 他の男達の私を見る目は、依然として険しく、なんでこんな奴らを呼んだんだ? と今にも言いたそうだった。

「こんな小娘共に、この状況を打破できると、本当に、思っているのか? ロイオンよ」

 会議の中心に居た大隊長が、あの部隊長──ロイオンに向かって尋ねた。
 大隊長が呼んでいると聞いてきた私達だったが、実際は、彼、ロイオンの進言によって連れてこられたようだった。

「ああ。以前も説明したが、我々の部隊は、この2人がいなければ、あの谷の戦いで全滅していただろう。今、我々が戦っている敵の主力部隊を、あの時、単独で撤退に追い込んだのだ。現状、この砦にいる人材の中では、間違いなく最強の兵士だ」

 ロイオンは、興奮気味にまくしたてる。

「そうまで言うか? こんなよそ者の小娘に……」

 その場にいる殆どが、私達に疑いの目を向けてきていた。

「戦いに加えて頂けるというのであれば、我々にも、戦況を聞かせてください」

 そんな中でも、ネモは平然と彼らに尋ねた。
 その態度は、多くの小隊長の癇に障ったようだが、ネモは気にも留めていないようだった。

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