夢を叶えた日、一番にきみを想う
本編
どういうつもりなんだろう。
「授業を辞めよう」と言い出した挙句、面談室へ呼び出したりして。

てっきり、俺の言葉に怒ったのかと思った。説教されるのかと思った。

“教えてよ。尚樹くんのこと”

先生の考えがよくわからないまま、言われた通り机の上に置いていた教科書をリュックに詰め込み、面談室の扉をノックする。すると中から、「どうぞ」と軽快な返事が聞こえた。

「ありがとう、来てくれて」

ここに座って、と先生は自分の目の前の椅子を指差す。
机の上にリュックを置いてから、指示された通り椅子に座った。

「あの、いいんですか」

友達以外の誰かとこうやって向き合って座る機会は滅多になくて、落ち着かない。
動揺を誤魔化すように、口を開いた。

「今、授業中ですよね」
「うん」
「授業、しなくていいんですか」
「授業、受けたいの?」

俺が正しいことを言っているはずだ。
それなのに、先生はキョトンとした顔で俺を見た。

「いや……別に」

正直に答えると、先生はクスリと笑った。

「あのね」

両肘をついて真っ直ぐ俺を見つめる。

「時には、授業よりも大切なことがあるんだよ」

……授業よりも大切なこと? 勉強する場所である塾に来ているのに、授業よりも大切なこと?

「今日は授業しないよ」

先生はにっこりと笑う。

「だから、その代わり、教えてよ。尚樹くんのこと」

先生は、さっきの言葉を、もう一度繰り返した。
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