*夜桜の約束* ―春―

[25]雨と答え

 平日午後早い時刻のハイウェイは走る車も少なく、広がる空間は薄灰色をしていても気持ちは開放された。

 途中サービスエリアに立ち寄り、温かなコーヒーとココア、ちょっとしたスナックを買い込んで、海の見える展望台に到着したのはそれから四十分ほどが経った頃だった。

「あ……雨、降ってきちゃいましたね……」

 駐車場には一台の車もない。車内からでも見えるように、高岡は一番見晴らしの良い場所へ車を停めた。

 しばらくそのまま車窓を埋め尽くす淡く穏やかな海原(うなばら)を眺めていたが、次第に水玉がその景色を彩り出した。

「傘は二本あるよ。外へ出ようか?」

「はい」

 後部座席下に寝かされていた傘を差し出す。

 高岡も自分の傘を広げて助手席側に回り込み、モモが濡れないよう配慮をした。

 高岡は濃いグレーのスーツに紺色の大きな傘、モモは白いツーピースに真っ赤な傘。

 ぼんやりとしたキャンバスに鮮やかな色が添えられた。


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