眠りにつくまで
大きな一歩
「引っ越しのような荷物になるのはおかしい」
光里が静かな口調のままだが少し膨れている。
「コートを買うわけでなく、部屋着だけでこの荷物ってどうなってるの?」
「光里は女の子なんだから部屋でもお洒落してたらいいんだよ」
ショッピングモールの駐車場で車に荷物を入れると、光里の手を取り店内に戻る。
「今日は私が夕食作る」
「荷物をうちに置くからうちでいい?」
「たぶん?」
「どうしてたぶん?」
「IHヒーターを使ったことがないから」
「それは問題ないよ。俺も手伝うし」
食品売り場へ向かう途中でドラッグストアがあったので足を止めた。
「光里、今日じゃなくてもお泊まりできるようにいるものを買おう。仕事の帰りにうちで食事している間に雪が降ったってなっても、女の子は部屋着だけじゃ泊まれないんじゃない?うちには何もないよ」
「お泊まり…」
「ベッドで一緒に寝るのが嫌なら、ソファーがベッドにできるから大丈夫。この前みたいに眠るまで手を握ってるよ…たった15分ほどだったけど」
「…早くてびっくりの記録…」
少し恥ずかしそうにした光里の頬を撫でてから店内へ促す。
「ここに必要なものがなければ他に行くよ?」
なかなかカゴに物が入らないので聞くと慌てて動き始めた光里は戸惑いがあるのだろう。しかしどんどん温かく新しい刺激を送り続ける。