眠りにつくまで






「あっ、戸田さん」
「はい」

午後、事務室を出ようかという時に事務局長に呼ばれ、書類の入った封筒の束を抱えたまま振り返る。

「それ、大学でしょ?」
「はい」
「通用門が昨日から工事で使えないの知ってる?」
「そういえば…少し前にメールが来てましたね。昨日からでしたか…ありがとうございます。表から行きます」

高校の裏と大学の裏が繋がっているのに通れないとなると、正門から道路を歩いて正門へ行かなければならない。大学も広いのでちょっとしたウォーキングだな。

高校の門を出て朝通った歩道を歩きながら、体育で球技でもやっているのだろうか…高校生の楽しそうな歓声を聞く。スポーツの秋ともいうよね…そんなことを考えながら、大学の正門手前に止まっている赤と茶色でお洒落に装飾された車の前を通りすぎるとき、足を止めたくなるほど珈琲のいい香りがした。

「珈琲くださーい」
「私はアイスコーヒーで」

私は仕事中と心で唱え、大学生の声を背中で聞きながら大学の事務室へと急いだ。
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