眠りにつくまで







「聖、いいこと言うじゃないか」

そう笑ったお父さんが

「光里ちゃん、僕も聖の言った通りだと思うよ。変わってもいいと最後に言った部分は‘自由に自分の意思で変えていい’と付け加えようかな」

そう言いながらスマホを聖さんに返した。

「変化はチャンス。怖いのもわくわくのスリル…どう?みんないいこと言うから私も言ってみたんだけど?」
「「まあまあ」」
「えー息子ってこういう時、可愛くないのね。光里ちゃんだけが私の味方だわ」
「えっと…はい、変化はチャンス…いいと思います」
「可哀想に光里…無理やり言わされたね」

聖さん…そう言って頭を撫でるのはお母さんに悪いでしょ?

「仕事、変わってみようかな…単純作業が向いているかと思っていたけど…」
「それはね、光里…たぶん、この5年間光里の心が動かない状態だったからだと思うよ。今は美味しいものを食べて綺麗なものを見て、好きな料理をたくさんして買い物もして、毎日心が動いているからどんどん光里自身が変わっていくと思う」
「そうかもしれない」
「じゃあ、決まり。光里は学校を辞めて俺の仕事を手伝ってね」
「…4月からでいいですか?今年度は出勤しないと…」
「もちろんそうだね。それまでに事務所にいい場所見つけるよ」
「よろしくお願いします…お兄ちゃんではダメなんじゃ…?三鷹さん?」
「ぶっ…光里も三鷹さんだね?聖が戸田さん?」

お兄ちゃんに言われて聖さんと顔を見合わせた。

「何も言われてないから三鷹のつもりだったけど、戸田の方がいいのかな?光里、聞いてる?」
「戸田のままとは子どもの頃から言われたことがないから三鷹さんのはず…」
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