眠りにつくまで
聖斗ハセイチビルデビュー





「はい、到着。聖斗、降りるよ」

ハセイチビル駐車場で聖さんの運転する車が止まり、後部座席で私が聖斗のチャイルドシートのバックルをカチャカチャっと外すと

「ふがぁーん…ぁーん」
「やっぱり泣くんだ…」
「お決まりだな、聖斗」

車が好きで降りるのに抵抗するように泣く。でも外から腕を伸ばした聖さんが抱っこすると、不機嫌ながらも泣き止む。

「聖斗、泣きべそ顔で雪乃ちゃんに会うのか?楽しみだなぁ」

ゴールデンウィークが終わってしばらくした今日は、出勤する聖さんの車に聖斗と乗せてもらい、紫乃さんと雪乃ちゃんに会いに来た。聖さんは会ったことがあるけれど、私が雪乃ちゃんに会うのは初めてでもちろん聖斗も初めてだ。まずは3人で6階に上がる。

「おはようございます。玲央さん、お久しぶりです」
「光里ちゃん、おはよう。元気?」
「はい。とても」
「聖斗、ようこそハセイチビルへ」

玲央さんが聖斗の頬を指でつつきながら

「お前、泣いたのか?」

とおかしそうに聖斗の顔を覗き込んだ。

「聖斗、バレてるなぁ…まずいぞ?雪乃ちゃんにもバレるぞ?」

聖さんもおかしそうに聖斗の顔を覗き込む。大きな二人が小さな聖斗を左右から覗き込んだ様子は、なんとも微笑ましい。

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