カッコウ ~改訂版
6、孝明の章

 みどりの実家を出て少し走った路肩に車を停めると、俺はハンドルに伏して泣いた。誰もいない車の中。声を上げて号泣した。
 大翔の小さな手や、しなやかな髪の感触を思い出す。まだ愛おしい。自分の子じゃないと知っても。もう会わないと決めたから。大翔も悠翔も、俺の中では6才と3才のままだろう。
 
 本当に手放していいのか。何とか許せるのではないか。昨夜から繰り返す思いを断ち切るように、俺は思い切り声を上げて泣き続けた。
 大翔が自分の子供じゃないなんて、想像もしなかった。初めての子供だから、むしろ悠翔よりも手をかけて育てた。悠翔よりも長い時間を一緒に過ごした。それが他人の子供だったなんて。受け止められるはずがない。
 
 大翔の父親が奥さんのいる人だと聞いたとき、俺の疑問がすべて解けた。初めてみどりを抱いた時に感じた疑問。みどりの体は豊かに熟していたから。
 みどりの父と向かい合って俺の隣で伏して泣くみどり。許して連れて帰りたい気持ちと俺は戦った。俺が許せれば表面上は今までの幸せが続くだろう。
 でも大翔は生きている。この先、必ず大翔がわだかまりになっていく。何かある度に、俺は大翔を恨むだろう。みどりとも対等ではいられなくなる。知ってしまったことを知る前には戻せない。







 
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