私を、甘えさせてください
「あ、嘘・・」


窓の外に視線を向けると、いつの間にか雨が降り始めていた。

少し待てば止むだろうか。
傘無しでは、さすがに濡れてしまう強さだ。


「どうしよう・・・・」


会計を済ませたものの、外に出るのを躊躇していると、『あの・・』と後ろから男性の声がした。


「あぁ、ごめんなさい。ドアの前にいたら邪魔ですよね」


私は慌てて脇にずれた。
それを見た男性はクスッと笑った。

なぜ、笑うの・・?


「人材開発2課の永田(ながた)さんですよね?
傘、どうぞ。たまたま2本あるから」

「えっ」


誰・・だろう。
向こうは私を知っているようだけれど。


「あの・・ごめんなさい。どちらの部署の方でしたっけ?」

「ああ、突然すみません。僕は、来週からあなたの上司になる空川(そらかわ)です」


空川・・空川・・・・。


「本部長!?」


これが私たちの初対面だった。

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