くたびれOL、魔王様の抱き枕を拝命いたしました!?
お盆休み前日の夜、旅行鞄に洗顔用品と化粧品、着替えを詰めて理子は魔王の待つ異世界へ渡った。
土日を含めたお盆休みは一週間。
最終日の前日には帰してもらう約束だから、滞在期間は五泊六日の予定だ。
召喚された夜は魔国のある大陸についてシルヴァリスから教えてもらい、明日からの冒険への期待に胸を膨らまして眠ったのだった。
頭を撫でる誰かの手を感じて、理子はベッドの中で身動ぎする。
ネグリジェから出た素肌に触れる、滑らかなシーツの感触が気持ちいい。
「起きたのか?」
低くて耳に心地好く響く声に、理子は頷いた。
(あれ? 誰の声?)
耳のすぐ側から聞こえた声に、理子の意識は覚醒していく。
「っ!」
バチッと、勢いよく目蓋を開いた。
「ぎゃあっ」と叫びそうになった声は何とか喉の奥へと押し込む。
カーテンの隙間から射し込む朝日に煌めく銀髪が眩しい。
麗しき魔王、シルヴァリスに背を向けて寝た筈なのに、何故か理子は彼に抱き締められる格好で寝ていたのだ。
色気を駄々漏れさせているシルヴァリスから離れようと気合いで上半身を起こす……ことは出来なかった。
「もう少し、眠っていろ」
背中に回された腕により、がっしりと押さえ込まれてしまったのだ。
はだけた寝間着から覗く胸元は薄付きながら筋肉が付いていて、理子の体は筋肉質な体と隙間無く密着していた。
理子の目線にあるシルヴァリスの喉仏は、彼が喋る度に上下して。こんな状況では、とても二度寝など出来ない。
「だって、その、近いから」
色々なところが気になって眠るどころではない。
絞り出すように言えば、シルヴァリスは耳元に唇を寄せる。
「何か問題でも?」
「ナニもアリマセン。おはようございます」
「おはよう」
理子の額にシルヴァリスの唇が軽く触れる。
おはようの挨拶を交わしたのに、背中に回された腕は離してはくれない。
脱出を諦めた理子は、素直に抱き締められることにしてシルヴァリスの胸に頬を寄せる。
規則正しい心臓の鼓動が伝わってきて、理子は目を閉じた。
(ちゃんと心臓が動いてる。呼吸も鼻からしてる。肺呼吸なんだ)
魔王が怪獣と同じ外見だと思っていた時は、彼はエラ呼吸かもしれないと勝手に思い込んでいた。
もしも魔王に角や鱗が生えていたら、触り心地はザラザラかヌメヌメと最悪で添い寝は絶対に無理だ。
見た目的に角は生えていてもいいが、刺さったら痛そう。
「リコ、何を考えている?」
「へ? 何も?」
突然問われて、ビクッと体を揺らしてしまった。
背中に回されたシルヴァリスの腕に力がこもっていく気がして、心の声が伝わってしまったのかと理子は怯えて体を縮こめた。
「お前が阿呆丸出しという顔をしているときは、大抵我に対して不敬な事を考えているいるだろう」
ギリギリと腕に力が込められていく。理子の上半身はシルヴァリスの胸と腕に締め付けられて圧迫される。
「くっ苦しい! 魔王様! 無理、死んじゃうって!」
半泣きになった理子は、締め付けるシルヴァリスの腕と胸をタップする。
「魔王様?」
腕の力を緩めたシルヴァリスは、意地の悪い口元だけの笑みを返す。
「や、止めてください、シルヴァリス様」
言い直した台詞か、半泣きになった表情か、或いは両方に満足された意地悪な微笑を浮かべた魔王様は、漸く理子の体を解放したのだった。
土日を含めたお盆休みは一週間。
最終日の前日には帰してもらう約束だから、滞在期間は五泊六日の予定だ。
召喚された夜は魔国のある大陸についてシルヴァリスから教えてもらい、明日からの冒険への期待に胸を膨らまして眠ったのだった。
頭を撫でる誰かの手を感じて、理子はベッドの中で身動ぎする。
ネグリジェから出た素肌に触れる、滑らかなシーツの感触が気持ちいい。
「起きたのか?」
低くて耳に心地好く響く声に、理子は頷いた。
(あれ? 誰の声?)
耳のすぐ側から聞こえた声に、理子の意識は覚醒していく。
「っ!」
バチッと、勢いよく目蓋を開いた。
「ぎゃあっ」と叫びそうになった声は何とか喉の奥へと押し込む。
カーテンの隙間から射し込む朝日に煌めく銀髪が眩しい。
麗しき魔王、シルヴァリスに背を向けて寝た筈なのに、何故か理子は彼に抱き締められる格好で寝ていたのだ。
色気を駄々漏れさせているシルヴァリスから離れようと気合いで上半身を起こす……ことは出来なかった。
「もう少し、眠っていろ」
背中に回された腕により、がっしりと押さえ込まれてしまったのだ。
はだけた寝間着から覗く胸元は薄付きながら筋肉が付いていて、理子の体は筋肉質な体と隙間無く密着していた。
理子の目線にあるシルヴァリスの喉仏は、彼が喋る度に上下して。こんな状況では、とても二度寝など出来ない。
「だって、その、近いから」
色々なところが気になって眠るどころではない。
絞り出すように言えば、シルヴァリスは耳元に唇を寄せる。
「何か問題でも?」
「ナニもアリマセン。おはようございます」
「おはよう」
理子の額にシルヴァリスの唇が軽く触れる。
おはようの挨拶を交わしたのに、背中に回された腕は離してはくれない。
脱出を諦めた理子は、素直に抱き締められることにしてシルヴァリスの胸に頬を寄せる。
規則正しい心臓の鼓動が伝わってきて、理子は目を閉じた。
(ちゃんと心臓が動いてる。呼吸も鼻からしてる。肺呼吸なんだ)
魔王が怪獣と同じ外見だと思っていた時は、彼はエラ呼吸かもしれないと勝手に思い込んでいた。
もしも魔王に角や鱗が生えていたら、触り心地はザラザラかヌメヌメと最悪で添い寝は絶対に無理だ。
見た目的に角は生えていてもいいが、刺さったら痛そう。
「リコ、何を考えている?」
「へ? 何も?」
突然問われて、ビクッと体を揺らしてしまった。
背中に回されたシルヴァリスの腕に力がこもっていく気がして、心の声が伝わってしまったのかと理子は怯えて体を縮こめた。
「お前が阿呆丸出しという顔をしているときは、大抵我に対して不敬な事を考えているいるだろう」
ギリギリと腕に力が込められていく。理子の上半身はシルヴァリスの胸と腕に締め付けられて圧迫される。
「くっ苦しい! 魔王様! 無理、死んじゃうって!」
半泣きになった理子は、締め付けるシルヴァリスの腕と胸をタップする。
「魔王様?」
腕の力を緩めたシルヴァリスは、意地の悪い口元だけの笑みを返す。
「や、止めてください、シルヴァリス様」
言い直した台詞か、半泣きになった表情か、或いは両方に満足された意地悪な微笑を浮かべた魔王様は、漸く理子の体を解放したのだった。