死んだはずの遠藤くんが教室に居る話
 するとみんなも自然に座り出し、残り少数(ほぼ遠藤くんの前の席の人たち)だけ壁に貼りついていたけど、担任は無視して学級委員長の北沢に説明を求めた。

 北沢は簡潔に話をする。
「授業中に遠藤くんが入ってきて、何も言わず自分の席に着いたのでみんなパニックになりました。他の先生と生徒には見えず私たちだけ見えます。ちなみに動画で撮ってみましたが映らなかったので証明はできません」
 理路整然の四文字が似合う女子だった。

「まだそこに座ってるとでも言うのか?」
 担任は不機嫌そうに僕たちにそう聞いたので、僕たちはうなずいた。

「じゃぁ、どうして先生には見えないんだ?」
 開き直ったように聞かれても、そんなの僕たちにはわからない。

「クラスのドッキリか?配信とかしてんのか?」
 ギラリと矢口の方を見るけど、矢口は知らん顔をしていた。

「これ以上バカにするのなら……」
 担任がそう言うと、急に遠藤くんは自分の席から立ちあがりスタスタと教壇に向かって歩き始めた。
 女子は小さな悲鳴を上げて口を押さえている。
 僕たちはそれを目で追っていると、担任が不思議そうな顔をした。

「先生、遠藤くんが今動き出して、先生の隣に移動しました」
 遠慮がちに前の席の女子が言うと、担任は大きくうろたえ左右を見つめて窓際に逃げて行く。何だかんだで怖いのだろう。
 
 僕たちは遠藤くんに集中していたら、初めて遠藤くんが「えーっと……」と、声を出す。

 話せるんだ。変な感心をしてしまう。
 遠藤くんは言葉を続ける。

「僕はみんなにいじられて、いじめられました。辛くて悲しくて死にました。だからみんなに復讐します。僕はみんなを恨みます。恨んで恨んで地獄に落とします」

 そんな宣言を急に始めたので

 教室の温度が一気に下がって
 担任以外のみんなの心が凍り付いた。

 
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