教室のクーラーが直ったのか効きすぎているのか、半そでのシャツでも鳥肌が立つほど寒気がするのは遠藤くんの効果かもしれない。
 そんなことを感じながら、僕たちは大人しく席に座り遠藤くんを見る。

「どこから話そうか。僕は中学でいじめられていて卒業式も出てなくて、新しい生活に憧れてこの街に家族で引っ越してきました。家族にたくさん迷惑かけました。ごめんね」
 遠藤くんがそう言うと、大岸くん越しに聞いたお母さんとお姉さんは涙を浮かべて首を横に振っていた。

「このクラスになって、やっぱり今井くんたちみたいな人たちにいじられて、イヤな気持ちにもなったけど中学ほどじゃなかった。パシリにされてたけど『お駄賃』ってたまにおごってくれたし、水かけられた後は帰りに謝ってくれてファミレスでパフェごちそうしてくれたし、机の上のいたずら書きは、何かの時……中学校でいじめられて汚い言葉とか嫌なイラストを机に書かれたって話をしたら『それ以上のヤツを書いてやろーぜ』っていう、ただのノリだから……そんなに気にもしてなかったんだ」
 目の端で今井を見ると「勝手に死んで語るなバカ」って言い、すごく嫌な顔をして机の上に足をのせていた。

「みんなともあまり話もしなかったけど、朝『おはよう』って言ったら『おはよう』って返してくれて、ハードル低いって言われそうだけど、僕はただそれだけで嬉しかった」

 大岸くんに教えてもらいながら、遠藤くんのお母さんはもう涙が止まらない。

「ただ嫌だったのは……本当につらかったのは……みんなに授業中ゴミをぶつけられたことだった」

 身体のどこか奥の遠い場所に鋭い針を刺されたように、僕は痛みを感じた。
 大岸くんも苦しそうに説明していた。

「中学と同じく僕は嫌われてるのかな、これからもっとひどくなるのかなって、僕はやっぱりひとりなんだな……って思ったけど……きっと、僕がみんなと同じ立場なら……同じことをやってるんじゃないかなってことも思った」

 理路整然とした遠藤くんは、生きていた頃の存在感のないパシリの遠藤くんとは別人だった。