貢ぎ物の令嬢ですが、敵国陛下に溺愛されてます!~二度目の人生は黒狼王のお妃ルート!?~
 これは前世でなかった事態である。

「本当なら今頃、ジャンと湖で舟遊びをしていたのよね……」

「大丈夫ですよ。喧嘩しても本当に愛し合っていればすぐに仲直りできますから」

「……ありがとう」

 ナディアがつぶやいた通り、本来ならばこの時期は舟遊びの誘いを受けている頃だ。

 ふたりのるのがやっとの小さな舟の上で、ジャンはナディアの珍しいピンクゴールドの髪とベリーのような瞳を褒めそやした。

 彼が不義を働いているなどと知らなかったナディアは、『父も同じよ』と照れ隠しに答えたものだ。

 そうなっていない理由はひとつしか考えられない。

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