仮面夫婦のはずが、怜悧な外科医は政略妻への独占愛を容赦しない


 外来を終え、診察室を出る。今日はそこまで予約が多くなく、時間通り終えることができた。だが他の診療科は終えていないようで、待合室には、たくさんの人が待っているのに目が留まった。

(どこもまだ忙しそうだな)

 大きな病院は、どうしても待ち時間が何時間も出てしまう。その点を改善したく、つい最近、来院後すぐに問診を受けられるようにAI問診ツールを導入した。

 だが七割が高齢患者のため、結局、事務職員がサポートしないといけなくなり、余計に手間がかかるという、悪循環に見舞われている。それに、対面で話したいという声も多かった。

 何か手はないかと考えていると、ふと、待合室にある人物がいることに気付いた。循環器外来の前で腕組みをし、顔を隠すように座る男性、拓郎だった。


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