クールなあおくんに近づきたい!〜あと10センチ、きみに届け〜

◇決意表明




「アナフィラキシーショック?」


朝の挨拶が飛び交う廊下。

すれ違った女の子たちの声が聞こえた。


「そうそう。それで救急車で運ばれたって。」

「え!こわ…何のアレルギー?」

「それが、わかんないんだって。」

「わかんないの!?超怖いじゃん」

「ね。まぁあんな田舎だし、こっちにはいないような得体の知れない虫とかいそうじゃない?」

「あー確かにー」










得体の知れない、虫。







「寧々、大丈夫?」

廊下で足を止めていた私に、花乃ちゃんが声をかけてくれる。

「…あっ、大丈夫!えっとー、あっ、教室通り過ぎてたぁ、あはは」

作り笑いする私を見抜いて心配そうな顔をする花乃ちゃん。

「…無理しないで、寧々。」

花乃ちゃんが手を握ってくれる。

「…うん。ありがとう、花乃ちゃん。平気だよ!」

教室に入って、私は窓際角、一番後ろの席に座る。

朝の天気予報では今日は晴れって聞いてたのに、窓の奥には曇り空。

カーテンを揺らす湿った風が梅雨入りを教えてる。

私は無意識に、窓の外の登校してくる生徒の中に逢和君の姿を探していた。


宿泊研修から土日を挟んで、今日。


逢和君は、私から一番遠いあの席に、いない。


< 77 / 204 >

この作品をシェア

pagetop