チューリップラブ





それから卒業までの時間、玲央は睡眠時間を削ってまで必死に勉強していた。それでも私と会う時間を減らすわけでなく、むしろ以前よりこまめに、1時間だけでも一緒に過ごすような感じだ。

「玲央、ちょっと寝たら?」
「なんで乃愛が一緒にいるのに寝る?時間がもったいないだろ…ん、これ試食して」
「また新作?ふふっ…」
「10分で出来るってこだわり」

玲央がアメリカに行ってからわかったんだ…彼は私の食事が不規則なことと料理が苦手なことを理解して、さらに教えると言えば‘いらない。必要なら検索して作る’ぐらい可愛くないことを言いそうな私に簡単なレシピを見せていたんだ。そして彼自身もアメリカで今よりもっと勉強に時間を割くことを見越して練習していたのかもしれない。

「8月にトルコに行くよ」
「トルコ…チューリップの原産地か」
「そう、玲央…よく知ってるね?」
「乃愛のことをよく知ってるから」
「…」
「照れるとこ?」

玲央は私の頭をポンポンとしたあと

「それでいい…乃愛は乃愛のやりたいことに真っ直ぐすすめ」

そう言って微笑んだ。私も彼が日本にいる最後の夏休みだからといって、じっと東京にいるわけではなかった。
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