「すっごく美味しい」
「これも焼けてる」
「玲央も食べなさいよ」
「食ってる。俺、器用だから焼きながら食える」
「…私には出来ないような言い方ね」
「誰しも得て不得手というものがあるから気にするな」

私が心の支えにし、励みにしてきた男が11年前と同じように私の目の前にいる。おじいちゃんおばあちゃんになって再会出来れば…なんて想像したことはあるけど、こんな風に玲央曰く‘デート’なんて想定外だ。

「うまいよな…壱、いい店知ってるな」

そう言いながら白米を頬張る玲央に

「イチ…?」

と聞き直す。

「乃愛と同い年の法科の長谷川壱」
「ああ…長谷川くん。まだ付き合いあるの?」
「大有り」
「自己完結しないで説明して。私が焼くから」
「焼きながら説明できる。壱は俺たちの会社のビルのオーナー。以上」
「はぁ?長谷川くんってビル持ちなの?」
「そう」
「この都心で?」
「そう」
「で、彼に焼き肉店を聞いて教えてもらった?」
「そう」
「…そうって言う度に1枚ずつお肉が皿に舞い降りてる…いただきます」
「ぷっ…食え食え」

玲央は上機嫌で網に肉を置く。あーこの会話のテンポ…最高。