再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 それが央太に対しての未練だとわかっていても、どうしても消すことができなかった。
 彼の腕の中に飛び込んでいけたらいいのに。この六年間、何度同じことを思っただろうか。

 そのたびに、彼の妹である道子の言葉がそれを制止してくる。
 央太は実家を継ぐ。そして、彼に見合った女性と結婚をする。その言葉が真綾の心にストップをかけてきたのだ。

 だからこそ、央太に勘づかれないように距離を置いてひっそりと親子二人生きてきた。
 だが、運命というのは時にいたずらだ。こんなふうに、隠し通していたことが露見されることになるなんて……。

 ノアとのことは誤解を解くとして、幹太の父親についてはどう話そうか。
 何度も考えては悩んでいる今日この頃。あまり悩んでいると、また幹太が心配するだろう。
 ダメだなぁ、と小さく息を吐き出したあと、オフィスビルへと入る。

 冷房が効いているロビーは、先程までの不快をカラリと拭い去ってくれた。
 ほぅ、とその快適さに人心地つきながら、エレベーターホールへと足を向ける。

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