リピートする世界を人魚姫は揺蕩う
 胸をなでられ、先端を転がされる。
 首筋を這っていた唇が近づいてきて、そこを舐めたり食んだりする。
 
「あっ……ん……ふぁ……」

 こんな快感、知らなかった。
 今までの生では彼はもちろん、男の人とこんなに親密になったことはなかったから。
 王子様の手は私のウエストを通り、腰へ到達すると、鱗の感触を楽しむように何度も行き来した。
 そのうち、その手はある一点の甘い痺れが走る鱗にたどり着く。
 鱗をそっと持ち上げられ、その中に指を挿し込まれる。

「ああ……」

 溜め息をつくと、ほんのり笑んだ彼が口づけをくれた。
 それと一緒に、くちゅくちゅと指が動かされ、私を官能の世界へ連れていく。
 
「気持ちいいかい?」
「うぅ……ん……」

 恥ずかしくてまともに返事ができない私をくすっと笑い、彼は愛撫を続ける。
 私は身をくねらせ、蕩けた。
 そのうち、彼のものが入ってくる。
 その圧迫感に心まで満たされた気になる。

 王子様も浮かされた表情で、喉仏をゴクッと上下させるしぐさに色気を感じる。
 心がバラバラになりそうで、彼の背中に手を回し、ギュッとしがみついた。

 タンタンタン……リズミカルな音が続き、快感が高められていく。何度もしているうちに、彼は的確に私の善がるポイントをつかんで、そこを執拗に攻めてくる。身をよじって、その快感から逃れようとするけれど、彼が私の腰を掴んで固定しているので、私は為すがままで快楽を受け取るしかできない。

「ああ……っ」
 
 限界がきて、脚びれをピンと伸ばした。
 私の中で彼が弾けて、それすら刺激となり、溜め息のような嬌声のような甘い息を漏らす。
 ゆっくりと私の髪に手を這わす彼。まるで愛おしいものにふれるような手つき。
 相変わらず、私の魅了でぼんやりしているけれど、口もとには笑みを浮かべ、目が合うとキスをくれた。

 王子様との暮らしは甘く淫らに穏やかに過ぎていた。
 意思があるのかないのかわからない。でも、話しかければ答えてくれるし、こうして抱き合い、愛し合うこともできる。

(愛し合う? お人形遊びと一緒じゃない!)

 心の中で皮肉な私が自分をあざける。

(それのなにが悪いの? 私は幸せになりたいの! もうあんな胸が張り裂けそうな思いはしたくないわ)
(幸せ? ただのまやかしじゃない) 
(いいのよ、これで。充分満足だわ)

 王子様にしがみつくと、優しく抱きしめてくれた。
 やがてまたタンタンと腰を打ちつける動作が始まった。


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