白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!

夫のために妻は走る

フィルベルド様と一緒に庭園から帰ると、オスカーが玄関で待っていた。



「フィルベルド様。お客様がお待ちです」



そう言って、私を気遣うようにちらりと見て言った。



「客? 来客の予定はなかったはずだが……誰だ?」

「その……エイマール公爵令嬢です」



オスカーは、言いにくそうにそう伝えると、フィルベルド様は、途端に困ったような顔つきになった。



「どなたですか?」

「……筆頭公爵のご令嬢だ」

「では、お待たせするわけにはいきませんね」

「そうだな……」



そう言って、フィルベルド様と居間に行くと、見覚えのある令嬢がいかにも淑女らしく座っていた。

フィルベルド様が、部屋に姿を現すと立ち上がり彼女は懇願するように駆け寄ってくる。



「フィルベルド様!」

「アルレット嬢。どうなさったのですか? いきなり我が家に来るなど……」



フィルベルド様は、顔色一つ変えない。

しかも、アルレット、とはフィルベルド様が逢引きしていた女性だ。

後ろをちらりと見ると、オスカーが軽く頷き、私に言いにくい来客だったと気付く。



「どうしてもお会いしたくて……」



目を潤ませながらアルレット様は私を見た。



「どうしてもご相談したいことがあるのです……もうどうしてよいか……」

「とにかく座ってください」

「でも……」



もう一度私をちらりと見るアルレット様は、私に下がって欲しいのだとわかる。



「……フィルベルド様。私は、下がりますので、どうぞごゆっくりお話ください」

「しかし、ディアナ以外の女性と2人になるわけには……なら、せめてオスカーがいてくれ」

「フィルベルド様……使用人には、お聞かせできないことなのです」

「なら、やはりディアナに……」

「今日の午後の出来事で来ましたの……フィルベルド様。私の気持ちをどうかお察しください」

「あのことですか……」



フィルベルド様の言葉にアルレット様はこくんと頷いた。



「……ディアナ。あとで部屋に行くから、待っていてくれ」



微かなため息をつき、フィルベルド様が私を一度抱き寄せるとすぐに離した。



そして、私は「失礼します」と言って2人を残して居間を後にした。





廊下をオスカーと歩き、居間から離れたところで、歩きながら話しかけた。



「オスカー……まさかの愛人の突撃ですよ」

「愛人なんて聞いたことがありません」

「おかしいわね……そんなに隠したいのかしら? 私は、愛人を拒否したことないのに……」



確かに愛人なんて、歓迎できるものではないけど……私とフィルベルド様は政略結婚だから、彼のためには私が反対できる立場ではないと思う。



「……あの、奥様」

「何かしら?」

「本当にあの時、フィルベルド様を見たのですか? 私には、ご令嬢は間違いなくあの方だとわかるのですが、あの時一緒にいたのがフィルベルド様だと……その、自信がなくてですね……」

「オスカーは眼が悪いの? あの時いたのは、フィルベルド様よ。他の場所でも見たし……」

「眼は確かに良くはありませんが……とてもそんな風には……」



あんな金髪碧眼のフィルベルド様を間違えるわけがない。



「とにかく急いで準備するわよ!」

「はぁ……」



フィルベルド様のためには、私にできることをしなければ、と複雑な気持ちがありながらも張り切って空き部屋へと向かった。





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