白い結婚なので離縁を決意したら、夫との溺愛生活に突入していました。いつから夫の最愛の人になったのかわかりません!

夫と妻の会話

夜には、ミリアが髪を梳き軽く結い寝支度を整えてくる。

「ディアナ様、今日のお客様のケーキは美味しくてメイドたちに評判でした」

確かに美味しかった。美味しかったけど……クレイグ殿下が怪しすぎてもういらない。

「でも、明日はこの邸の料理人のケーキがいいわ」
「ディアナ様に、そう言われると料理人さんは喜びますね」
「ははは……」

フィルベルド様が連れて来た料理人の腕は良い。美味しいけど、クレイグ殿下の差し入れを頂きたくなくてそう言うと渇いた愛想笑いが出た。

「では、寝支度が整いましたのでフィルベルド様をお呼びしますね」

私の寝支度が整うとミリアがフィルベルド様呼びに行くことになっている。

「せめて、君の顔を見てから寝たい」と、フィルベルド様がそう言って、寝る前にはフィルベルド様とお休みの挨拶を交わすことになっているのだ。

そして、少し待つとミリアに声をかけられたフィルベルド様が私の部屋へとやって来る。
私は、出来上がった刺しゅう入りのハンカチを持ち、部屋の扉を開けた。
顔を見るなり、うっとりとした表情になるフィルベルド様にハンカチを両手で出した。

「あの……フィルベルド様。新しいハンカチに刺しゅうを施したんですが……昔よりは上手くなったと思うんです。どうぞもらってくださいませんか?」
「俺に……! しかも、イニシャルまで……」
「はい。前のハンカチは、家紋だけでしたので……この間のデートの時に雑貨屋で買ったんですよ。これなら、フィルベルド様が喜んで下さるかと……」
「それで一人で雑貨屋に……こちらのハンカチも一生大事にする。ディアナ、ありがとう」
「はい」

大事そうに受け取ってくれると、やっと喜んでもらったと思い私までホッとした。

「今度は、遠乗りにでも行かないか? 休みまでは少し時間がかかるが……」
「はい。楽しみです」

自分の馬は持ってなかったから、馬に乗ることはなくお父様に乗せてもらっていたことを思い出すと懐かしい。
思わず、顔がほころぶとフィルベルド様が微笑みながら頬を撫でる。

「遠乗りの時は、沢山サンドウィッチを作りますね」
「料理ができるのか?」
「ずっと一人でしたから……」
「すまない……俺のせいだな」

色んな料理が出来るようになったのは、確かにフィルベルド様がいなくて、使用人もいないあの全焼した屋敷にいたからだけど別に恨んだりはしてない。

「気にしないでください。料理が出来るようになっても困りませんよ。それに、難しい料理は出来ませんから、やはり料理人は必要です。私が出来るのは、簡単なものばかりですから……」
「ディアナは、本当に優しい。だが、ちゃんと食べてたのか?」
「食べてましたよ。友人のイクセルが時々晩餐にも呼んでくれましたし……」
「そうか……友人がいたな。確かリンディス伯爵家の嫡男だったか。今度は、俺が邸にいる時に来てもらってくれるか? ぜひ、彼に会いたい。ディアナの大事な友人だ」
「はい。では今度、晩餐に招待しましょうね」

包み込むように抱擁されながら、そう返事をした。

「いい匂いがする……新しい石けんか?」
「オスカーとミリアが、色々石けんを買って来たんです。その中で、私が気にいった石けんのお店を呼ぶつもりらしいですよ」
「そうか。遠慮なく選びなさい」
「はい……」

本当は石けんに、こだわりはなないけど、何も欲しがらない私を気にしてフィルベルド様がそう言ったとわかった。












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