早朝。清香が目を覚ますと、志弦はもうスーツを着込みネクタイを締めているところだった。壁掛け時計の示す時刻はまだ朝の五時半だ。
「おはようございます。日曜日なのに、もう出勤されるんですか?」
 上半身を起こし、ゆうべ志弦が貸してくれたカーディガンを羽織る。
「悪い、起こしてしまったか?」

 オンモードの凛々しさにドキリとする。シックなブラックスーツは、知的な彼によく似合う。
(職場にこんな素敵な人がいたら、とても仕事にならないんじゃ……)
「志弦さん、絶対、会社でモテますよね?」
 あきらかに嫉妬のにじむ声で、言ってしまった。志弦は驚いたように目をパチパチと瞬く。が、否定の言葉はない。
(そりゃ、そうよね。モテないはずがないし)
 馬鹿な質問をしたと清香は小さく肩をすくめる。彼はベッドまで歩いてくると、隣に腰をおろす。

「もしかして、ヤキモチ?」
 からかうような瞳で顔をのぞき込まれ、観念するしかなかった。
「……ヤキモチです。同じ会社で働く人がうらやましいなって」
 志弦はなにかを考えるようにななめ上を見あげる。
「君と一緒の職場かぁ。楽しそうだけど……」
 そこで言葉を止め、清香の耳に唇を寄せる。