あなたを愛しても良いですか。
新しい出発

悠太が城ケ崎流を去ってから、3か月が経っていた。

今、私は悠太とニューヨークにあるフラワーアレジメントの展示会場にいる。
この展示会は、オークションでもあり、気に入ったフラワーアレジメントは落札により購入することが出来るのだ。


悠太の生けた花は、日本の生け花を基本としたアレンジだ。
華やかなアレンジメントが多い中、逆にシンプルで和のイメージが強い作品にしたのだ。

中でも目を引いたのは、大きな作品にも関わらず、牡丹の花が一凛だけ飾られている。
その花を引き立てるように周りには古い流木が荒々しく飾られている物だった。

その作品の斬新さに皆が目を奪われようだった。

翌日にはかなりの話題になり、ニューヨークの新聞社も大きく写真と記事を載せていた。
すると、生花のアレンジメントにはありえない高額が付けられたのだった。


悠太はニューヨークで『YUTA』という名前で活動を始めていた。

まだ3か月にもかかわらず、この展示会がきっかけとなり、その名前はフラワーアレジメントの世界ではかなり知れ渡ることになったのだ。

しかし、そうなると調べられるのが悠太の素性だ。
当然、恋人についても調べる記者も出て来たのだ。

私は悠太の元を去る決心をした。


「悠太さん、やはり私が一緒に居ると、あなたの足を引っ張ってしまいます。だから私はもう一緒に居ないほうが良いですね。」


悠太は私の言葉を聞いて驚いたような表情をした。


「涼子、俺が守ると言ったはずだ。信じてくれないのか。」

「で…でも…。」


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