だめんずばんざい
side 岳人





仕事から戻ったカオルちゃんの部屋で、パジャマのまま床に倒れるカオルちゃんを見て自分の血の気が引くのがわかった。

呼吸を確かめ、寝ているだけのようなので熱を確かめつつ起こしてみると、俺を見たカオルちゃんの目からポロポロ…涙が落ちる。体調が悪いわけではなく気持ちの問題だ…俺が不安にさせたんだ…ごめん。

彼女に嘘を言っていたわけではない。部屋を出た過程も、建設業だということも、6月に新しい部屋に入居するということも事実だ。

ただ‘五百旗頭’の名前を聞いてカオルちゃんが逃げてしまいそうで、詳しくは言えていなかった。名前を聞いても逃げてしまわないくらい好きになってもらってからでないと言えない。毎日たくさん話して、お互いの気持ちを確かめ合って、高め合って…そして新しい部屋に招いて話そうと決めていた。

男女を問わず、今までに俺の名前を聞いて寄ってくる奴はたくさんいたが逃げられる心配をしたのは初めてだ。カオルちゃんのことが好き過ぎて不安なんだ。

彼女のように、俺の行動を肯定的に受け入れてくれる人は他にはいない。何より、彼女のどの言葉もが俺の心を軽くしてくれて俺を惹き付けてやまない。
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