ぼくらは薔薇を愛でる

雑踏の中の輝き

 市井に降りて社会勉強をすると許しを得てから様々な決め事ができたが、体験先が変わるごとのレポートもその中のひとつだ。体験先の仕事内容を日々記録し、気づいた事、改善点、反省点などをレポートにまとめる。これを職場の上長に見せてアドバイスをもらったら、それを手に帰城して顔見せがてら報告する決まりだ。

 一つの職場を終えたらそうして帰城し、職場以外のこと、例えば街を歩いていて見通しが悪いところ、雨の日の水はけの悪い場所、雨水が溜まりやすい場所などの他、人々の会話の端々から感じたことなども話すことはあった。弟妹も久しぶりの兄の存在にテンションが高く、食事を終えてもまとわりつき、3人で遊び疲れソファで眠ってしまう夜もあった。

 翌日は一日休みなら、クラレットを誘って会うことは可能だが、休む時は休む。それも必要な事なのだとレグはわかっている。そうしないと、翌日からの新しい職場でやっていけない。何度目かの職場でようやうそれに気がついて、それからは休みの日は休む事に専念するようになった。クラレットに会いたいのはもちろんあるが、青い顔をして会うわけにはいかない。
 それに、レグが帰城している間は屋敷の者たちの休暇でもあるから、それを邪魔することはできないとも考えていた。
< 19 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop