政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
心が離れた原因 side涼成

 アラームで目を覚ました時、すでに恵茉の姿はなかった。

 もう起きたのか……。

 寝室を出てリビングに向かうと、弁当を作り終えた恵茉がコーヒーを入れている。

「おはよう。今日も早いな」

 ここ数日ベッドで一緒に目を覚ましていない。それまでは寝ぼけながらキスをして、互いの寝癖を確認しあって笑うという、ささやかな時間に癒されていたのに。

「おはよう。もうコーヒー入れてもいい?」

「ああ、頼む。顔を洗ってくるよ」

 顔を洗うだけにしようと思っていたけれど、なんとなくもやもやする心をスッキリさせたくてシャワーを浴びた。

 朝のスキンシップが減ったのと比例して、夜も恵茉に触れていない。

 それとなく誘おうとするのだが、恵茉からまったくそういう空気を感じ取れないのだ。だから俺も遠慮し、キスをして眠るだけに留めている。

 せっかく気持ちが通じ合ったのだから、毎晩でも抱きたいという欲望を必死に押さえつけながら。
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