こころが揺れるの、とめられない
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スニーカーを履いて外へ出ると、さあっと頬を撫でる風が、道の隅に落ちた木の葉を掃いていく。
まだ少しだけ熱が残っている目元がしみて、わたしはジャージの立ち襟に顔を埋め、目を細めた。
更衣室で、何度も鏡を確認したから、……大丈夫。
赤みは引くまで待ったし、泣いた後だってわからないはず。
息を吐き出し気合いを入れてから、すでに掛け声やボールを蹴る音が飛び交うサッカーグラウンドに立ち入ると、
「おう、上村。休みじゃなかったのか」
わたしに気がついた向井先生が、声をかけてきた。
「……遅れてすみません」
「美術部のほうに顔出してたのか?」
「えっ」
驚いて目を丸くすると、向井先生は顎に手を当てる。
含み笑いを浮かべながら、まるで親戚のおじさんのような眼差しを向けてきた。
「春野先生から聞いてるからな。どうだ、モデルになった気分は」