こころが揺れるの、とめられない
こころ、ふわふわ
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月曜日と、木曜日。
サッカー部の練習が、休みの日。
夕日が差し込む美術準備室に、キャンバスを滑る筆の音だけが、心地よく響いてる。
窓際のスツールに座るわたしの前髪を、風が優しく撫でていく。
向かいから注がれる視線に、いつまで経っても慣れなくて、緊張する。
落ち着かない気持ちを誤魔化そうと、静かなサッカーグラウンドを眺めがちなわたしに、
『上村さん、こっち向いて』
三澄くんはたまに、そう呼びかけてくる。
大人しく正面に向き直れば、張りのある美しい瞳とぶつかって。
わたしの心臓の動きが、再びぎこちなくなる。
そんな、放課後。
正直、心は休まらないけれど、……今まで傷ついた部分がゆっくりと癒えていく、ような。
――わたしと三澄くんだけの、不思議な時間。
それが何度か繰り返されれば、気づけば残暑は嘘のように姿を消し、過ごしやすく涼しい日々が、わたしたちを迎えていた。