憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました
救急現場


土曜日の夕方は、西関東総合病院(にしかんとうそうごうびょういん)のERにとって魔の時間帯の始まりだ。
病院の場所が住宅街とはいえ首都高速道路のインターチェンジからも近いため、自宅で転倒した高齢者から交通事故の負傷者まで幅広い患者が搬送されてくるのだ。
‶断らない救急病院″と宣言しているだけあって、これから深夜にかけて可能なベッド数のギリギリまで受け入れが続く。

七月半ばの土曜日、後期研修医の立花由美(たちばなゆみ)も救急の初期診療を受け持ちながら慌しく働いていた。

「ミミ先生、浩太君はネブライザーで落ちつきました」
「ありがとう。じゃあ、お母さん呼んであげて」
「はい」

重度の喘息発作を起こして受診した男の子がようやく落ち着いてきたと報告を受けて由美はホッとした。 
 
周囲から‶ミミ先生″とニックネームで呼ばれている由美は、金沢にある大学の医学部を卒業して5年が経つ。
身長は普通だが、華奢な体つきなのでスラリとして見える。
艶のある真っ直ぐな髪を肩にふれるくらいまで伸ばしていてシャープな印象だが、笑うと切れ長の目がいっそう細くなるのでアニメキャラに似ていると子ども受けがいい。
実際には古風な美人といえそうだが、本人はいたって平凡な顔だと思っている。




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