婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
2.
 コンラット公爵は不機嫌だった。不機嫌である故、目の前に国王陛下というこの国の一番偉い人がいても腕を組んで足を組んで、彼を拒絶するような態度をくずさない。

「この度は、大変申し訳ない」
 と謝罪しているのが国王陛下というこの状況。

 だが、不機嫌なコンラット公爵であっても、目の前の国王陛下がこのような態度をとってしまえば「陛下、頭をあげてください」としか言いようがなかった。
「ですが、我が娘リューディアは非常に傷ついております。やはり、娘と殿下の婚約は無かったことにしていただきたい」

「それは……」
 国王は言い淀む。

 先日、このコンラット公爵家に、この国の第一王子であるモーゼフから婚約解消手続きの書類が一方的に送られてきた。リューディアと第二王子であるエメレンスから先日の出来事を聞いていた公爵ではあるが、このような書類が本当に届くとは思ってもいなかったし、一方的に送られてきて「はい、そうですか。わかりました。サインします」といえるような内容でもない。
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