婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
3.
「父上、ディアのことはおまかせください」
 大きな体で大きな瞳を潤ませているコンラット公爵に長兄が伝えると、なぜか母親であるサフィーナの方がぽろぽろと泣き出して、愛娘をぎゅっと抱きしめた。

「お母さま、お兄さまもお義姉さまもいらっしゃいますから……」

「えぇ、そうね。あなたがこちらに戻って来ることを、楽しみに待っているわ」
 両親に背中を押されたリューディアは、兄家族と共に魔導車へと乗り込んだ。魔導車は動力が馬ではなく、魔宝石に封じられている魔力によって動く車両。馬と違い、途中で休憩などを挟まなくても良いし、単純に速度も出る。
 ヘイデンとイルメリは並んで座り、その向かい側にリューディア。そしてなぜか彼女の両脇に甥っ子であるミルコとヴィルがいる。リューディアの服装も、普段屋敷にいるときのようなドレスではなく、動きやすいようなワンピース姿。動きやすそうな服装であるのは、何もリューディアだけではない。ヘイデンもイルメリもミルコもヴィルも。郷に入れば郷に従えということのようだ。

< 46 / 228 >

この作品をシェア

pagetop