ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 だから、そんなふうに優しく頬をなでられると困ってしまう。どこまでも手の届かない遠い人でいてくれないと。

「俺がどんな顔だって?」

 いつもとぜんぜん違うんです。

 今のあなたは優しすぎる。

 まるで――。

「誘惑の悪魔のようです」と言うと、彼は楽しそうに笑った。

「そうか、じゃあ教えてあげよう。悪魔の誘惑を」

 言葉だけでクラクラする。

「人には C触覚繊維という――」

 まるで私の体に言い聞かせるように、彼は指を滑らせる。

 彼の唇や指先に夢中になりながら、やっぱり人じゃないと思った。天才がつく外科医は、悪魔だ。

 私をいとも簡単に虜にする。



< 103 / 273 >

この作品をシェア

pagetop